· 

キコリと味わう、信州大町の大自然

今年の7月にリブランドオープンしたホテル、ANA ホリデイ・インリゾート信濃大町くろよんがTHE NORTH FACEを扱うGOLDWINと共に新しいマウンテンリゾートを共創することを発表。
その第一弾の取り組みとして、ワーケーションプランをビジネスパーソンにアピールするということで、メディア向けの試泊を10/29から10/30に開催しました。
なんとその取り組みに私たち山仕事創造舎も協力させて頂き、信州大町の魅力をアピールすべくワークショップを行ってきた。

「キコリに会えるだけで面白い」
そもそも都会で働いていたらキコリに会う機会はほぼない。企画検討段階でホテルの担当の方は東京からWEB会議越しにそう言って私たちの提案に魅力を感じてくれた。たしかに私もつい六年前までは東京で働いていたからそれはわかる。都会の中ではボルダリングで壁に登ることはあっても、樹高20mを超える木に登る機会はないし、割り箸を割る機会はあっても、オノで薪を割る機会はない。

2015年から毎年開催(2020年は中止)していた「山創森のまつり」で、キコリならではの森林を活かしたワークショップをいくつか行ってきたが、それはあくまで地元の子ども達やその家族の方に向けた内容であり、都会の大人の方々、しかも様々なことに精通しているであろうメディアの方々が私たちの取り組みをどのように感じるのか、不安も多くあったが様々な方の支援もあり、今回のイベントに協力できることとなった。

さて、迎えた本番、まずは29日の夜。
ホテルの中庭に二つ並んだTHE NORTH FACEのドームテント(GEO DOME)、これを囲むようにスウェーデントーチやかがり火を焚く演出を用意、これらには炎の美しいアカマツ、さらに二つのドームテントの間に焚き火台を置き、これには広葉樹の薪を焚き、冷え込みがキツくなり始めた大町の夜に薪の温かさを感じてもらおうと考えた。
実際にそれぞれに火がつくと、中庭に面したラウンジのガラスにドームテントと炎が反射し、それはとても美しく、三社が組んだからこそ出来た空間だととても誇らしい気持ちになった。
昼間は国営アルプスあづみの公園でTHE NORTH FACEの契約アスリート監修のもと、トレイルランニングとマウンテンバイクの体験されてきたというメディアの方々。
温泉とディナーを楽しんだ後に訪れた寛ぎの中庭空間にどの方もとても気持ちが安らいだ様子で、日中に自然の中でカラダをめいっぱい動かした達成感の余韻もあってか、焚き火にあたりながらワインを楽しむ方の頬がずいぶんとにこやかにやわらいでるように感じられた。
薪の火を楽しんで頂きながら、林業のこと、木のこと、キコリの暮らしのことなどの質問も頂き、火の番をしながらのメディアの方々との会話は私たちにとっても新鮮で、これからの私たちのあり方のヒントを得たような気がする。

そして翌30日、ホテルに隣接する森林の中で「薪割り」と「ロープを使った木登り」を朝から実施。
どちらもレジャー施設などで実施されることもあるため、すべての方が初めてということではなかったが、「キコリと一緒に」となると経験された方はなく、ただ遊んでもらおうというのではなく、森林や林業、信州大町の魅力をこの体験を通じて少しでも感じてもらおうという私たちの心が伝わるからか、とても手応えのある時間になった。
それは斧を振り上げる時の真剣な眼差しや、登った木の上から下を見下ろした時の驚きの声、終始林内に響き渡った笑い声、お土産になればと用意した木工ワークショップで作った小枝の色鉛筆やバードコールを大切に鞄にしまう姿から感じるもので、この取り組みをやって良かったと思える手応えであった。

この地域で暮らしていく為に、山での仕事を創造してきた山仕事創造舎は、創業から20年、何とか舎員26人が生活できる会社になった。
これからは、自分たちが食べていければいいというのではなく、「山仕事で地域の未来を創造していくような会社でありたい」と思うし、今回の取り組みはそんな想いを形にするきっかけのひとつだとも思っている。

今回参加されたメディアの方々が実際にどのような表現をされるのかわからないが、その文章を読んだ方がこの地域に訪れたとき、少しでも多くの森林をこの信州大町の自慢にできるように、また山に戻り森づくりを行いたい。

それにしても、今回このような素晴らしい機会を与えてくれた方々にはなんとお礼をしていいか、またどこかでお返しができるように励みたい。

原田