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松川村の家具工房「ソルンテ」さんを訪ねて 

 松川村の山麓線沿い、安曇野ちひろ美術館の近くに、家具工房「ソルンテ」( Solnte ソルンテ shimada-kagu )さんはあります。今回、ソルンテさんで製作された家具に、山仕事創造舎で切り出した広葉樹が使われたことを聞きつけ、お店に取材に伺いました。

 お店を入ると、どーんと素敵なテーブルセットとソファが。なんとこれが、すべての部材が地域材(松川村、大町市、小谷村などで伐採された木材)で作られた家具。

 そう伺うと、その家具たちとは初対面ながら、自然と親近感がわいてきました。すっと指でさわると、丁寧に加工され優しく丸みをおびた表面から、やわらかな暖かみを感じます。

 手前に見えるのは、鎌倉のお蕎麦屋さんに納品される2組のテーブルセット。一つはクリ、一つはサクラ。サクラのテーブルの脚に、山仕事創造舎で伐採した松川産のサクラが使われています。長野県出身のお蕎麦屋さんたっての希望で、地域材が使われることになったそう。

 地域材は、製品材(大手の材料屋さんが取り扱っている木材)に比べて、板の色目や年輪の幅が不ぞろいになりがちです。

 ソルンテさんとしては、そのことが、お客様にどう受け取られるのかを心配されていたそうで、特に奥に見えるサクラ材のテーブルの制作では、天板の木取りや組み合わせに相当時間をかけてデザインされた、ということでした。
 近くで見せて頂いたテーブルセットは、地域材ならではの色の濃淡や年輪の動きがうまく活かされたデザインとなっていて、やわらかく丁寧な仕事の中にも力強くかつ個性的な雰囲気を醸し出しており、すごく素敵でした。

 2脚の一人掛けのソファも、地域材で製作。小さい方のソファはサクラ材、大きい方はクヌギ材です。いずれも山仕事創造舎が山から切り出した木材。2019年に、たまたま散歩で通りがかった松川村にある山創の土場でこのサクラ材、クヌギ材に出会い、製材、お店の軒先での天然乾燥を経て、4年越しでソファに生まれ変わったもの。

 できるだけ直径の小さい木でも製作できるように工夫されていて、小さい方のソファはなんと最大幅が13センチの板で製作が可能だそうです。地域材を使うことに目を向けていく中で、できるだけ地域材を活用できるように、比較的小口径の材料から家具を作るために考えられたソルンテさんの工夫でした。

 少しお話を伺うだけで、地域材でできた製品には、材料の入手の段階から、それぞれが固有のストーリーを持っていました。そこにさらに、家具の作り手の気持ちがのせられ、使い手の元に運ばれていき、そこでもまたそれぞれの生活が刻まれていく軌跡。林業事業者も、気持ちを込めて木を切らないとな、と気が引き締まりました。

 ソルンテさんは、お仕事を続けられる中で、家具の職人として “製作を続ける意味” “地元の木を使って形にする意味”を考えながらも、当初は乾燥の具合や材の品質が心配で、なかなか地域材を使った家具の制作に踏み切れなかったそうですが、今回のテーブルとソファの制作を経て、ある程度の手ごたえを感じている、とおっしゃっておられました。

 また、「地域材を使うと、自分たちに身近な場所から伐採された、出所のはっきりした木材を使って家具づくりをしていることで、気持ちがグッと上がります」というお話もあり、これからどんな家具が作られていくのか、すごく楽しみになりました。

 ソルンテさんは、受注生産で家具を製作されています。今だと、納期までに1年~1年半ほど時間をいただいているそうです。家具が欲しい方は、時間に余裕を持って、まずは、ホームページを眺め、松川村にあるお店を尋ねられてはいかがでしょうか。

 店頭にある家具やカタログを見ながら、嶋田さんご夫婦と会話するところからはじめると、いい家具づくりの大事な一歩が踏み出せると思います!お店には家具だけじゃなくて、他の作家さんが製作した厳選されたかわいい小物もありましたよ。

 最後になりますが、ソルンテさん、お忙しいところ、色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。